Mother's Day2026 エッセイ③
- 1 日前
- 読了時間: 4分

タイトル:私の歩幅で歩く
執筆者:もちこ
「隣の芝生は青い」というけれど、どんなに目をこらしても、やっぱり隣の芝生は青く見えた。周りの友人たちは、結婚生活に子育て、仕事さえも順調にこなしているように見えるのに、私だけがどれもうまくいかない。
「乳がんですね」
医師からそう告げられた瞬間、それは決定的なものになった。
「こんなにがんばってきたのに、どうしてまた私が?」
ひとり、暗い海の底へと沈んでいくような感覚だった。
けれどその一方で、心の奥深くでは、どこか妙に納得している自分もいた。
私は常に張りつめた状態で、休むことなく走り続けていた。なかでも子育ては一筋縄ではいかず、私のエネルギーを容赦なく削っていった。
子どもが癇癪を起こすたびに、激しい感情の波にのまれ、気づけば私は、こんな言葉をぶつけるようになっていた。
「ママ、早く病気になって死んじゃうからね!!!」
きっと、心も身体も限界だったのだと思う。
けれど――ああ、本当に、言葉の通りになってしまった。
泣いても泣いても涙があふれてきて、止まらなかった。
とても後悔した。
そんなとき、私の心を救ってくれたのは音楽だった。
「胸がうるせえ時はいつだって 静けさに耳を傾けて
心配いらねえ 大丈夫だって 僕の中の君が言うだけ」
ちょうど病気を告げられた頃に出会ったこの曲。私は来る日も来る日も、ひとり布団に横たわり、自分の体のすみずみまで染みわたらせるように、ひたすら聴き続けた。張りつめていたものが少しずつ緩んで、心も身体も軽くなっていく感じがした。
そして、ふと思った。
病気は神様からのメッセージなのかもしれない。
「もっとあなたらしく生きなさい」と、自分の体も言っている気がした。
それから私は、自分に意識を向けるようになった。深く呼吸をすること。よく眠り、体を休めること。ヨガをすること。食べたいものを食べること。行きたい場所に行くこと。家事が少しおろそかになってもいいから、気になるテレビを見ちゃうこと。
どんなに些細な事も自分の心と身体の声に従う。その満足感は、これまで味わったことのないものだった。
そしてもうひとつ、大きく変えたことがある。
自分にかける「内なる言葉」だ。
これまで頭の中には、「もっとがんばらないと」と自分を追い立てる声ばかりが響いていた。それらを手放し、私が心から必要としている言葉を、自分にかけてあげるようにした。
「よくがんばってきたね」
「休んでいいよ」
「きっと大丈夫」
やさしく包み込むような言葉で、自分自身を満たしていった。
心と身体と頭を少しずつ整えていく中で、私の中心には、小さな光が灯るようになった。その光のおかげで、副作用のつらい時期も、悲観することなく、ただ静かに耐えることができた。
髪の毛はすべて抜け落ちたが、娘はいつも私のつるつる頭をなでながら「ママ、かわいい〜!」と笑った。
「このママも好きだよ」そう言って私を抱きしめ、無邪気な笑顔を見せてくれる娘に、どれほど励まされたことか。
「ママ、絶対元気になるからね!」
無事に一年の闘病期間を乗り越え、私は心身ともに元気になった。
失ったものもあったが、病気を経験したからこそ得られたもののほうが圧倒的に大きかった。
自分の心と身体の声に耳を澄ますこと。
あるがままの自分を受け入れること。
そして、自分で自分を満たしてあげること。
自分が自分らしくいられるようになると、自分のことが好きになった。
肩の力が抜け、いい意味でわがままになった私を、とても気に入っている。
これから先も、迷い、立ち止まる日があるだろう。
それでも、娘の笑顔と、自分の中に灯ったこの光を頼りに、私はきっとまた歩き出せる。
さぁ今日も、自分の歩幅で歩いていこう。
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最後までお読み頂きありがとうございました。このエッセイは、Mother's Dayキャンペーン2026のために、シングルマザーのもちこさんが執筆しました。NPO法人シングルマザーズシスターフッドは、シングルマザーの心とからだの健康とエンパワメントを支援する団体です。ご寄付は、「シングルマザーのセルフケア講座」やその他エンパワメントプログラムの運営費として大切に使わせていただきます。ご寄付はこちらの寄付ページで受け付けております。


































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