Mother's Day2025 インタビュー③
- Maco Yoshioka
- 1 日前
- 読了時間: 9分

わたしの声に、耳を澄ます
執筆者 後藤美奈子さんインタビュー
聴き手:吉岡マコ
この春、シングルマザーズシスターフッドのMother’s Dayキャンペーンが5周年を迎えます。この節目の年にあたり、これまで8回にわたってキャンペーンでエッセイを執筆してくれたシングルマザーたちの「その後」に耳を傾ける、スペシャルインタビュー企画を実施しました。
3つ目のインタビューに登場してくれたのは、初回から参加してくれていた後藤美奈子さんです。
言葉の力を信じ、自分の声に耳を澄ませながら、「ごきげんで生きる」ことを大切にしてきた美奈子さんの歩み。その背景にある決断や日々の実践に、静かな強さとやさしさがにじみ出ています。
過去のエッセイを振り返って、気づいたことや感じたことを伺いました。
子守唄のおまじない2021年5月
ごきげんいかが 2022年5月
10年日記 2022年12月
わたしのままで 2023 12月
1. 過去に執筆したエッセイを今読み返してみて、どんな思いが湧いてきますか?
今から4年前、息子は小学校4年生。赤ちゃんの時から歌っている子守唄を、今でも歌っているという話を書きました。
あれから4年、中2の息子とは寝る場所も別々で、もう子守唄は歌っていないけれど、歌ってない今でも、「可愛い、いい子だね、大好きだよ」と言っています。
赤ちゃんの頃は「可愛い」と言えても、大きくなれば照れくさくて言えなくなるかもしれないから、子守唄にしてずっと何年も歌っていた。歌にのせて、可愛いと言い続けてきたから、今でも自然に言えるのかもしれません。
その後に書いた3つのエッセイを読み返すと、自分の価値観がよく表現されているなと我ながら思います。書くたびに、どんどん自分の感覚がクリアになっていっていることに気づきました。
「堂々と楽しい方を選ぶ」ということを決めてから、どんどんその輪郭がはっきりしてきています。
2.「当時の自分らしいな」と思うところ、また「今の自分とは違うな」と感じるところがあれば教えてください。
2つ目のエッセイを書く前にちょうど離婚が決まって、色々なことが変わりました。決着がつくまでの6年半の別居期間は、宙ぶらりんで、先が見えなくて、地に足がついていない感じで。
やっと離婚が決まって、気持ちが本当に晴々として「自由だ!」「私は私でいこう!」「二人の暮らしを楽しくやっていこう!」と腹が決まった感じが、このエッセイにも現れていると思います。
それでも、基本的なことは変わっていないと思います。言葉の力を信じていること。自分で発する言葉に自分が元気付けられていること。自分が自分の一番の味方でいたいということ。
自分で決めて、現実を自分で変えられるということ。自分の機嫌を自分でとること。日々の暮らしが一番大事。今をいつも楽しくしたい!というのは、ずっと変わっていない自分のあり方だと思います。

3. エッセイを書いたときから現在までの間で、あなた自身に最も大きく起きた変化は何ですか?
決断力
価値判断の基準がはっきりしたから、決断が早くなりました。
まずやってみる
「まずはやってみよう」「行動してみよう」と思えるようにもなりました。シングルマザーズシスターフッドのキャンペーンにあったスローガン「まずやってみる」「失敗という概念はない」の影響です。
違う世界に関わる
普段はフリーランスでデザイナーをしていますが、違う世界に関わりたいと思い立ち、週に1回介護施設の調理のアルバイトを始めました。料理が好きなので、10人くらいのご飯を作るのが新鮮。みなさん喜んで、残さず食べてくれるのが嬉しいです。
多様性を祝福する
介護施設のアルバイトで気づいたのは、高齢の女性にも色々な人がいて、「おばあちゃん」と括ってしまうにはもったいない豊かな多様性があるということです。シングルマザーズシスターフッドのキャンペーンでも多様性を祝福すると謳っていますが、ひとり親だけでなく、高齢者、不登校、引きこもり、どの属性についても言えることなんだと思います。
若い頃に海外に暮らしていてクリスマスカードを英語で書くおばあちゃん、国語の先生をしていたおばあちゃん、パッチワークが好きで自分で図案を考えて小物を自作しているおばあちゃん。週に1日アルバイトに入っただけで、全然違う世界が見えてきました。
本当は、一人ひとり全然違う。少しでも顔が見えると、途端に見える世界が違ってくる。そういう視点が自分の中に育ったと思います。
4.もし今、改めてエッセイを書き直すとしたら、書きかえたいところはありますか?それともとくにない?それはなぜですか?
読み返すと、気恥ずかしい気持ちはあるけれど、書きかえたいところはありません。
「これを読んでもらえれば今の私がわかる」と思って、照れくさいけど、知り合いや家族にも読んでもらいました。それは多分「キャンペーン」という枠があったからできたこと。客観的に、自分を知ってもらう機会になりました。
5.シングルマザーズシスターフッドのキャンペーンに参加した経験が、あなた自身や周囲との関係性に与えた影響はありますか?
こんな場所があるんだ!
まず、初めてに参加した時、シングルマザーの集まりでこんな場所があるんだと嬉しくなったのを覚えています。ミーティングがサクサク進んで意思決定が早いのも気持ち良くて。このスピード感がよかった!発言も活発で、前向きで親切な仲間からたくさんの刺激を受けました。
実は、議事録を作成したり、進行をしたりするのも初めての経験でした。「やってみようかな」と思える場所だったんですよね。
仲間と一緒に作り上げる楽しみ
キャンペーンごとに仲間が増えるのも嬉しく、一緒に何か作りあげる楽しみを味わいました。
早く起きてミーティングする、チームで校正する、エッセイへのフィードバックだけでなく、キャンペーン全体の振り返りでみんなから暖かい言葉をもらったり、いろんなことがやっていて楽しかった。「こういう世界があるんだ」っていう驚きもありました。
安全なスペースだったからこそだと思いますが、キャンペーンを進めていく中で、仲間のパーソナルなことがわかったりもしました。オンラインなので、近くで話すわけじゃないけれど、お互いのことをより深く知ることができたのも豊かな経験で、自分も自己開示することへの抵抗が減ったと思います。
率直なコミュニケーション
自分のエッセイを校正スタッフの仲間が丁寧に読み込んでくれて、フィードバックをもらうのも楽しいやり取りでした。「ここのフレーズ好きだから残して欲しい」とか、こうやって受け取ってくれるんだ!という発見と喜びもありました。
シングルマザーズシスターフッドでは、社交辞令や取り繕うことは不要で、率直なコミュニケーションが気持ちよかった。そうした経験から、日常生活でも「違和感を置き去りにしない」自分がおかしいなと感じたことを発言できるようになりました。

6.エッセイを書いた時の自分にメッセージを送るとしたら、どのような言葉を伝えたいですか?
最初は、エッセイを公表するのに勇気がいったから、一歩踏み出したときの勇気に「グッジョブ」と讃えたいです。
書いてる最中は真剣だから、そんなに気にならないのだけど、ハッと振り返ると「こんなに自己開示していいのかな」って思う時があります。それでも自分の作品を公開したその勇気を讃えたい!
7.これからの3年間で、あなた自身が大切にしたいこと、また実現したい夢や目標があれば教えてください。
大切に毎日を積み重ねていきたい
3年先は、どこで暮らしてるかもわからないです笑。あたたかい水辺で暮らしたいという希望はあるかな。これからも変わらず、美味しいご飯を食べて、健やかに、自分の声に耳を傾けて大切に毎日を積み重ねていきたいです。
ギターとサーフィン
習っているギターとサーフィンはもっと上手くなりたいです。最初はBlack Birdという曲を弾けるようになりたくてギターを習い始めたのですが、先日とうとうBlack Birdに辿り着きました!
サーフィンは2022年に始めて、まだ上手くなった気はしないけど、今年は種子島に旅してサーフィンを楽しみたい!3年よりもっと先ですが、還暦にはハワイで波に乗るのが夢です!
8.このキャンペーンを通して、家族の多様性が社会にどのように伝わってほしいですか?あなたの思いを聞かせてください。
キャンペーンを通じて、これまでのたくさんのエッセイからいろんな人生のかたちがあると私も知ることができました。エッセイを読むとそれぞれが自分の大切な人生を生きていることがわかります。
「シングルマザー」というラベルで一括りにされてしまうこともあるけれど、当たり前だけどみんな違っていて、一人ひとりが特別な存在だということを、エッセイを読むことで感じてもらえたら!
それをこれからも、もっと多くの人に知ってもらいたいと思います。
9. 自分のエッセイの中で、お気に入りのフレーズがあれば教えてください!
色々あるんですけど、
「いつだって、自分が自分のいちばんの味方でいよう。ずっと一緒にいる私に、ごきげんいかがと声をかけよう。」(『ごきげんいかが 』2022年5月 )
がお気に入りです。自分を大切にすることで、自分も身近にいる人も幸せになると思うから。
息子が学校に行かない時期があったり、「友達がいない」とか言う時もあったけれど、まずは、ごきげんであればいい!それが一番、と思っています。細かいことをみたらヤキモキすることもあるけど、楽しそうに鼻歌を歌いながら過ごしてる息子を見ていたら、自分のことを愛せているんじゃないかと思います。

美奈子さん、ありがとうございました!言葉を大切に、自分の声に耳を澄ませながら、ごきげんな日々を丁寧に重ねてきたその姿勢と言葉のひとつひとつが、読む人の心の中に、あたらしい風を吹き込んでくれるように感じました。
キャンペーンのことを「知ってる」だけよりも、関わっていた方が絶対に楽しいから、新しい仲間も大歓迎!笑顔で話してくれた美奈子さん。
「誰もがそれぞれの特別を生きている」。そんな視点が、エッセイやこのインタビューを通して、少しずつ広がっていきますように。
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