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Mother's Day2025 インタビュー⑤



今という時間を、自分らしく楽しむ

〜積み重ねたエッセイが導いた今

執筆者 小泉しのぶさんインタビュー

聴き手 吉岡マコ


この春、シングルマザーズシスターフッドのMother’s Dayキャンペーンが5周年を迎えます。この節目の年にあたり、これまでエッセイを執筆してくれたシングルマザーたちを再訪し、彼女たちの「その後」に耳を傾けるスペシャルインタビューを実施しました。


第5弾(最終回)では、これまで6本のエッセイを通じて自身の思いや日々の葛藤を綴ってくれた小泉しのぶさんが登場。書くことで見えてきた自分の変化、そこから始まった新たな展開、そしてこれから大切にしていきたい未来について、お話を伺いました。


ネガティブ思考だった私を変えたもの        https://www.singlemomssisterhood.org/post/mother-s-day2021-essay4

思い描いた未来を手に入れるために、いま必要なこと(前編)

思い描いた未来を手に入れるために、いま必要なこと(後編)

セルフラブで新たな自分に出会う     

ようこそ 試練       

自分の物語を生きるために       

凸凹な自分のいちばんの味方       


1. 過去に執筆したエッセイを今読み返してみて、どんな思いが湧いてきますか?


よくここまで来たな

過去に書いたエッセイを読み返して、「こんなに書いていたんだ」と驚きました。少し距離をおいて読むことで、「私、よくここまで来たな」と思えました。たくさん泣いたし、落ち込んだこともあったけれど、前に進もうとしていたなあとしみじみ振り返っています。


空の色を取り戻した瞬間

特に印象に残っているのは、近所のコンビニでふと空を見上げたときのこと。「きれいだな」と感じたその瞬間、ずっと見えていなかった空の色を感じる力が、自分の中に戻ってきたように感じました。最初の頃は、前向きに書こうとしながらも、不幸にとらわれていたと思います。でも書き続けることで、少しずつ経験が意味を持ち、自分の内側が変わっていきました。


安心して弱さを見せられる関係

この4年間、いつもそばにはシスターフッドで出会った仲間たちがいてくれました。取り繕わずに話せる関係、気持ちを率直に分かち合える場が、どれほど自分を支えてくれていたかに気づきます。そのあたたかさがあったからこそ、コンフォートゾーンの外へと踏み出せたのだと思います。


2.「当時の自分らしいな」と思うところ、また「今の自分とは違うな」と感じるところがあれば教えてください。


とにかく行動していたあの頃

過去のエッセイを読み返して感じるのは、「自分でなんとかしよう」と懸命にもがいていた姿です。とにかく行動することで前に進もうとしていて、それはまさに当時の自分らしいなと思います。ただ、今振り返ると、少しがんばりすぎていたようにも見えます。力の抜き方を知らなかったというか。


自分にやさしくなれた今

今の私は、自分を責めることが減り、空の青さや風の心地よさなど、五感で感じる余白を大切にできるようになりました。力が入っているときに、そのことに気づけるようにもなりました。セルフケアを日々の暮らしに取り入れてきたことで、ようやく自分にやさしくする感覚が育ってきたのだと思います。


苦い記憶を、節目として迎えられた日

以前、誕生日に元夫から「家を出ていきたい」と告げられた記憶が、何年も心に影を落としていました。けれど今年の誕生日、同じ学習会に参加した帰り道に、「もう大丈夫」と思えた瞬間がありました。誕生日を過去の痛みと結びつけるのではなく、今の自分を祝福できる日にやっと変えることができました。


3. エッセイを書いたときから現在までの間で、あなた自身に最も大きく起きた変化は何ですか?


自責から行動へ

エッセイを書き始めた当時は、息子の不登校に深く悩み、「これは私のせいだ」と自分を責めていました。けれど今は、その時間を前に進むためのエネルギーに変えられるようになりました。と同時に、「対話するにはどうしたらいい?」「周りを巻き込んで、より良いシステムを作るには?」という問いを持つようになり、思考の方向そのものが変わったと感じています。ただ耐えるのではなく、関係性や仕組みに働きかけていく視点が、自分の中に育ってきました。


「こうあるべき」からの解放

子どもに対しても、「~しなければならない」といった執着を手放せるようになりました。子どもは一番近い他人。だからこそ、信じて、任せることの大切さを実感しています。委ねることでこそ、本人の力が発揮される場面もある。人には力がある。その言葉の意味が、本当の意味で腑に落ちてきました。


不登校だった息子も大学生に

かつては宿題にもなかなか取り組めなかった息子が、今では自分の「好き」を見つけ、大学での学びに意欲的に向き合っています。人にはそれぞれのタイミングがあり、「やりたい」「好き」という気持ちは、自然に前へ進む力をくれます。その姿を見守る中で、私自身も肩の力が抜けて、ずいぶん軽やかになりました。


4.もし今、改めてエッセイを書き直すとしたら、書きかえたいところはありますか?


書き換えたいと思うところはありません。「幼いな」「そんなに自分を責めなくてもよかったのに」と思う箇所はありますが、あのときの自分が感じていたことは、その時の真実でした。たとえ未熟でも、その時にしか書けなかった言葉があると思います。変化のプロセス自体を大切にしていきたいです。


5.シングルマザーズシスターフッドのキャンペーンに参加した経験が、あなた自身や周囲との関係性に与えた影響はありますか?


スキルと自信を育てた実践の場

すベてリモートで進行したキャンペーンへの参加は、自分にとって大きな転機になりました。コロナ禍で「Zoomって何?」というところから始まり、クラウドツールを駆使してオンラインでの共同作業ができるようにまでなりました。超アナログな職場でICTが導入され始めた頃には、他の職員よりも一歩先を行く知識と経験があり、自信を持ってアイデアを出すことができました。


言葉の奥にあるものを感じ取る力

また、このキャンペーンで他の執筆者のエッセイ制作に関わる中で、言葉にされてこなかった背景や事情があることにも気づきました。自分の見えている範囲がすべてではないという感覚が芽生え、一人ひとりの人生をより丁寧に尊重したいと思うようになりました。思いを言葉で伝える力も育ちました。そして、何より、笑顔が増えました。


6.エッセイを書いた時の自分にメッセージを送るとしたら、どのような言葉を伝えたいですか?


よくがんばってきたね。なんだかんだ言って、逃げださず、すごいです。そのがんばりは、周りに光を与えているから、安心して、自分のやりたいことをやって大丈夫だよ。いろんなことはあったけど、全部何とかなっている。あなたは、強運を持っている、ラッキーウーマンです。


7.これからの3年間で、あなた自身が大切にしたいこと、また実現したい夢や目標があれば教えてください。


自分の人生を“カラフルな詰め合わせ”にしていきたいです。これは、RADWIMPSの「賜物」にある「せっかくだから唯一で無二の詰め合わせにして返すとしよう」という歌詞に心を動かされて考えたことです。大好きな朝ドラ『あんぱん』の主題歌で、素晴らしい歌詞に何度も背中を押されました。


舞台やコンサートにもたくさん足を運んで心を震わせたい。まだ見たことのない景色に出会いながら、自分を満たす時間を重ねていきたい。スカイダイビングやSUPもやってみたい。

そして、マインドフルネスの学びを深め、まわりの人とも穏やかにつながっていきたいです。誰もがその人らしく力を発揮できる社会づくりにも、少しずつ関わっていけたらと願っています。


8.このキャンペーンを通して、家族の多様性が社会にどのように伝わってほしいですか?


このキャンペーンを通して、一人ひとりの物語に目を向けてもらえたらと思います。自分には見えていないことがあるかもしれない。決めつけずに、「ちょっと話を聞いてみようかな」と関心を持ってもらえることが何より嬉しいです。見えない世界があることに気づけたら、きっと世の中はもっとおもしろくなる。みんな同じじゃなくていいし、それぞれが違う人生を歩んでいる。それもまた「ありだな」と思えるような、多様な価値観にひらかれた社会になっていってほしいです。 


9. 自分のエッセイの中で、お気に入りのフレーズがあれば教えてください!


人にはもともと力がある!その力を発揮できる環境づくりこそが大切なんだ。

「自己否定」でいっぱいだった私のマインドが、氷のように溶けていきました。


「不登校」というキーワードがあったからこそ、多くの人と出会うことができ、私の人間関係が豊かになった。私の豊かな人生のためには、離婚も不登校も宝物のような大切なもの。


しのちゃん、ありがとうございました。「一見悪いことばかりに思える出来事の中にも、宝物が詰まっている」と語るその笑顔に、これまでの歩みと、これからへの思いが重なって見えました。失敗に見えることも、すべては経験となり、その経験を「なるほど」と受け止めながら前に進んできたしのちゃん。命は限られているからこそ、自分がやりたいこと、好きなことを思いっきりやる。疲れたら、そのときは一緒にセルフケアをして、また進んでいけばいい。そんなしのちゃんの等身大の姿に、あたたかい力をもらいました。



Mother’s Dayキャンペーン2025をぜひ応援してください!
最後までお読みいただきありがとうございました。NPO法人シングルマザーズシスターフッドは、ひとり親の心身の健康とつながりを支援する団体です。毎年5月と12月に、応援の寄付を募集するキャンペーンを実施しています。

いただいたご寄付は、シングルマザーのセルフケア講座や表現による自己の回復プログラムを継続するための運営費として大切に使わせていただきます。こちらの寄付ページで受け付けております。

シングルマザーズシスターフッドの支援活動に少しでもご共感いただけましたら、ぜひ応援者になっていただければ幸いです。


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2 Comments


Hiromi Kawamura様、コメントありがとうございます! 乗り越えたからこそ見える世界が広がったなと思います。 これからもこれからもいろいろある人生だと思いますが、新しい世界を見るチャンスがやってきた!と軽やかに歩んでいきたいと思います。

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過去の自分を振り返り、認め、受け入れ、褒める、慰める。素敵ですね。乗り越えて来たからこそ、ですね!


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Image by Jason Leung

5周年記念!
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