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Mother's Day2026 エッセイ①

  • 4 日前
  • 読了時間: 4分



タイトル:二つの門出

執筆者:さい


「ともくん、ママがいい〜って言ってたけど、ひとりで教室に行けてえらかったね!」 

「これから、朝は2人で学校に行けるね。」


今日は息子の入学式。小学3年生になった娘と、他愛のない会話をしながら参列する入学式は、とてもなごやかだった。式が終わり、親子で歩く帰り道。しとしとと降る小雨がアスファルトを濃い鼠色に染めている。


その雨は、私に娘の入学式を思い出させた。あの日も今日と同じように冷たい小雨が降っていた。けれど、同じ雨の中にいながら、私の心情は今とはまるで違うものだった。


2年前の娘の入学式。その頃の私は、自分が「ひとり親」であることを、まるで「何かが欠けている」ように感じていた。周囲の人は、ひとりで参列している私をどう思っているのだろう。「大切な節目の日にパートナーと来ることができない、寂しい人…? 」そんな不安を抱えた私は、他の保護者と関わる余裕もなく、必要最低限のコミュニケーションでやり過ごす。


雨に濡れた校庭を歩きながら、私は自分と世界との間に、決して越えられない透明な壁があるように感じていた。娘の晴れ姿を目の前に笑顔をつくりながらも、心の中では結婚生活を継続できなかった自分を責め、泣いていた。


4年前、私たち3人は縁もゆかりもない土地へと移り住んだ。そこで過ごした歳月は、傷ついた私の心にそっと寄り添い、静かに癒してくれた。 娘の進級と息子の卒園を機に、私は当初の決意通り、地元には戻らず新しい土地への引越しを決めた。


しかし、準備が進むにつれ、心身の疲労は蓄積していった。初めて訪れたときは孤独だったこの地で、助けてくれる友人ができ、生活の基盤も築き上げた。それをわざわざ崩してまで離れる必要があるのだろうか…。


そんな迷いを抱えたまま迎えた引越し前夜。寂しさを紛らわそうとつけたテレビのアニメが、偶然にも「主人公が引越しをする」内容だった。引越しの不安を映像で追体験した私は、急に呼吸が浅くなり、涙が止まらなくなった。誰かに助けて欲しくて、子どもたちから離れて洗面所に駆け込み、震える指で友人に電話をかけたが繋がらない。 


「もう、全部投げ出してしまいたい…。」 


恐怖に支配されていたその時、LINEの通知が鳴った。 


「さいちゃん、大丈夫だよ。」 


その一言を見つけた瞬間、私を支配していた恐れの霧が一気に晴れた。 この4年間、何度友人の存在に支えられてきただろう。


友人は、生まれ持った家族とも婚姻関係を結んだ夫婦とも違う。なんの約束もしていないのに自分の意思でそばにいてくれる。なんて尊いことだろう。 


「大丈夫。ここに来た時も不安だったけれど、最後はこんなに大切な場所になった。新しい場所も、きっとそうなる。」


入学式のあった体育館を出て、校門の前に3人で並び写真を撮った。相変わらず小雨は冷たいが、もう周囲の目を気にして萎縮する私はいない。人の目を気にして自分の選択の結果を隠した家族を演出するのではなく、私たちは自分たちの手で、自分たちにとって最高の「幸せな家族」を創っていくのだ。今までも、これからも。


楽しく食事して笑い合った日、3人で肩を寄せ合って眠った夜、困難を乗り越えるたびに強まった絆。その積み重ねこそが、私たちの人生の基盤になっている。


「よーし、入学式と始業式がんばったから、おいしいゴハンを食べよう!」


「やったーーー!」

 

私はもう、ひとりぼっちではない。いや、最初からひとりぼっちじゃなかったんだ。私たちは、この3人で1つのチームなのだ。 新しい土地の風を頬に受けながら、私は自分の足がしっかりと大地を踏みしめているのを感じた。これまでの過去も、これから訪れる未来も、きっと愛していける。大切な人たちと一緒に、望む未来に向かって歩んでいくんだ。



Mother's Dayキャンペーン2026ご寄付のお願い
最後までお読み頂きありがとうございました。このエッセイは、Mother's Dayキャンペーン2026のために、シングルマザーのさいさんが執筆しました。NPO法人シングルマザーズシスターフッドは、シングルマザーの心とからだの健康とエンパワメントを支援する団体です。ご寄付は、「シングルマザーのセルフケア講座」やその他エンパワメントプログラムの運営費として大切に使わせていただきます。ご寄付はこちらの寄付ページで受け付けております。


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