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寄付月間キャンペーン2024 エッセイ④


ゆうしゃ は らしんばん を てにいれた!


執筆者:ロミイ


私にとって走ることは、少年漫画の主人公が挑む修行のようなものだった。


主人公は限界を乗り越え、強大な力を手に入れる。私もそうなりたかった。


幼少期からバレーボールにのめり込んでいた私は、プロを目指し限界まで自分を追い込むようになった。


そのペースは長く続かなかった。でも休むわけにはいかない。母親の期待に応えたい、何より自分自身を認めたかった。


ここを乗り越えれば成長できるはず。


しかし疲れや怪我で、思うように動けなくなった。周囲についていけない。自信を失くした私は立ち止まってしまった。その時、奈落の底に突き落とされるような落ち込みが襲いかかった。

頑張りたいのに動けない。


残るのは絶望だった。もう燃やせるものがない。消し炭のようになっても理想を掴みきれない。


私は退部届を提出した。


やがて不登校になった私に、母親は「あまり頑張るな」と言った。その言葉は自己嫌悪に拍車をかけた。前に進みたいなら頑張るしかないだろう。その努力も否定されるのか。


もはや何が正しいのかわからない。でも、理想さえ掴めば、やっと自分を認められるかもしれない。そのためなら自滅しようがどうでもいい。


いつしか私は、また自分自身を蔑ろにするようになっていった。


ひとり親になったときも、私は全てを仕事に捧げ、自分をすり減らしていた。


本業のほかに副業を始めたが、いくらやっても自転車操業で、もはや何のために頑張っているのかわからなくなっていた。


気力が朽ちていくのを呆然と眺めていたとき、シングルマザーズシスターフッドのセルフケアに出会った。


私はやっと、疲れ果てた自分自身を直視した。この有り様では頑張れるはずもなかった。

もう限界だ。これだけやっても、また私は理想に辿り着けないのか。


走り始めたのは、そのタイミングだ。


「5分でもいい、話しながら走れるペースで」


そう言われ、初めて自分のペースを意識した。


ペースを上げる。息が切れて苦しくなる。


最後まで走れるかと自分に問い、ペースを落とす。


呼吸が落ち着いて充実感が満ちる。


そのうち体の準備が整ったのを感じる。するとペースを上げても体がついてくる。


気持ちと体が応え合い、力を発揮できる。


「これが自分のペースか!」と大発見した気持ちだった。


自分自身に伴走し、毎分毎秒変化する心身の状態に応え続ける。


それは、走りながら自分自身を尊重する行為だ。


走るたびに、自分への信頼感が積み重なっていく。


「自分を慈しむこと」と「頑張ること」の両立。


あれほどできなかったことが、すんなり体現できたことに驚いた。


走るのは楽しかった。地面を蹴り出し、宙を駆ける。


自由を感じる。


それは、何かに打ち込む時と同じ感覚だ。


好奇心が火矢のように飛び、刺さって一気に燃えあがる。


そうなった私は無敵だった。


ああ、私は好きなだけ頑張りたかったのか。


その一方で頑張ることに恐れも感じている。


母親の声が蘇る。「あまり頑張るな」


いいや違うね。そんなつまらないことを言うな。私は思いっきり走りたいんだ。ペースなんかくそくらえだ。


走って走って、転んで起きて、泥にまみれてまた走る。


そうやって前に進んできた。どん詰まりでも考えうる手をすべて打ち、状況を打開してきた。


結果が出なくても構わなかった。自分が頑張っている事実にだけは胸を張れたからだ。頑張りたい気持ちはエネルギーそのもので、いつだって私の味方だった。


そんな命さえ燃やし尽くすような情熱を肯定しても、今の自分なら応えられる。


情熱を燃やすのにもパフォーマンスを発揮するのにも、コンディションが土台にあることを知っているからだ。


たとえ情熱のまま無理をしても、心身に応じて調整していける。走ることで自分を見つめ、信頼を取り戻してきた私なら。


いざ行かん! 勇者は、羅針盤を手に入れた!


寄付月間キャンペーン2024ご寄付のお願い
最後までお読み頂きありがとうございました。このエッセイは、寄付月間キャンペーン2024のために、シングルマザーのロミイさんが執筆しました。NPO法人シングルマザーズシスターフッドは、シングルマザーの心とからだの健康とエンパワメントを支援する団体です。ご寄付は、「シングルマザーのセルフケア講座」の運営費として大切に使わせていただきます。ご寄付はこちらの寄付ページで受け付けております。


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