走るほどに、自分も娘も愛おしい
執筆者:かお
不登校の中2の娘。
朝から動画を見てばかり、自己肯定感が低い発言が多く、私のイライラは止まらない。朝の出社前に娘に怒鳴り、夜の帰宅後に散らかった部屋にため息をつく。登校できた日はなぜか安心した。
私と娘二人きり、どこに行くのも一緒だった。
今、私たちは、海が見える場所に暮らしている。
2年前、娘と何度も話し合い、娘のお気に入りの喫茶店でお互いの気持ちを最後まで確認し、東京を離れ移住する事を決めた。
いつも心配している東北在住の私の両親は、東京よりさらにはるか遠くに行く事に大反対だったが、やれば良かったと後悔したくないと伝え、飛行機に乗った。
思い返せば周りには反対されることが多い人生だったが、二人手を取り、不安な時はさらにぎゅっと手を結び、前に進んできた。移住してからも車の助手席には、いつも娘がいた。
しかし最近の娘は、お出かけに誘っても「行かない、、ママだけ行ってきていいよ。」子ども乗せ電動自転車を捨てた日も泣いたけど、今回は返す言葉もなくもっと寂しい。
いつもいつも娘の事が心配で、一時は在宅勤務にして見張っていたような時期もあった。しかし娘も私もお互いにイライラが募るばかりで、信頼感はすり減りそれぞれの自己肯定感も減っていった。
シスターフッド・ランニングクラブの募集が始まったのは、そんな時だった。
ずっと走りたかった。
今でも時々思い出す、毎朝近所のグラウンドを走った子ども時代。
いつも弟の後ろを走り、ゴールは弟が蹴り上げた土で私の体はいつも泥だらけだった。数か月後、最後のコーナーで初めて弟を抜かした。ただ静かにすがすがしかった。泥だらけでも諦めず毎日淡々と走ったあのすがすがしさを味わいたい。
朝6時、さっそく、シスターフッド・ランニングクラブお勧めのランニングアプリを入れたスマホをポケットに突っ込み、家から一歩踏み出してみる。
1分もしないで現れる海岸、どこまでも続く海、空、季節によって形を変える雲、朝の光に包まれる。そんな自然の中、ひとり静かに自分に向き合い、自分の力だけで走る。
何十年かぶりの筋肉痛、少しずつ走れる爽快感、体が蘇るのを感じた。モヤモヤから解放され、走った後は充実感に包まれ、心身共に安定していった。
走るってなんて素敵なんだろう。
一人きり何にも頼らず、自分だけの力で全身を使い、前に進む。覚悟を決めた者だけが得られる体験なのではないだろうか。
娘も大きくなり、それぞれ一人の時間が必要なステージになったのかもしれない。走ってみよう。
娘も、自分で決めたことに挑戦し、きっと喜びを得るのだろう。私には見守ることしか出来ないのかもしれない。
娘との間に一本の線が引けた気がする。深く、無くてはならない線なんだと自分に言い聞かせる。
ずっと繋いでいた手を静かに離した。
最近の娘の口癖は「私は今、絶賛、思春期!反抗期!成長期なの!」
彼女は彼女で必死に自分の道を走っているんだなと思えるようになった。
小さい頃からわりと優等生だった私は当初、娘の行動やあり方を到底理解できず、自分も苦しんだし、娘のことも苦しめた。しかし、ここへきて、いかに自分が周りの目を気にして生きてきたか、自分の本当の気持ちを迎えに行くことの素敵さに気付かされた。
彼女には、自分だけの自分に合った道を行ってほしい。今は、心からそう思える。
私は私の道を走りながら、彼女を横目に応援する。
私たちを親子にしてくれた神様に感謝しつつ、人生の友として、お互いの道を走っていこうか。
今の私達なら、ひとりずつでもいけそうね。
寄付月間キャンペーン2024ご寄付のお願い
最後までお読み頂きありがとうございました。このエッセイは、寄付月間キャンペーン2024のために、シングルマザーのかおさんが執筆しました。NPO法人シングルマザーズシスターフッドは、シングルマザーの心とからだの健康とエンパワメントを支援する団体です。ご寄付は、「シングルマザーのセルフケア講座」の運営費として大切に使わせていただきます。ご寄付はこちらの寄付ページで受け付けております。
\ セルフケア講座はこちら /
Comments